民事保全法-係争物に関する仮処分
平成28年 午後の部 第6問

司法書士試験ピックアップ過去問解説

問題

係争物に関する仮処分に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 裁判所は,係争物に関する仮処分命令において,仮処分の執行の停止を得るため,又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることができない。

イ 土地の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全債権として,当該土地について処分禁止の仮処分を得た債権者は,当該売買が無効であっても,当該売買によって当該土地の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは,時効完成後に当該土地を債務者から取得した第三者に対し,当該仮処分が時効取得に基づく所有権移転登記手続請求を保全するものとして,その効力を主張することができる。

ウ 占有移転禁止の仮処分命令の執行後,第三者がその執行がされたことを知らないで係争物である土地について債務者の占有を承継した場合であっても,債権者は,本案の債務名義に基づき,当該第三者に対し,当該土地の明渡しの強制執行をすることができる。

エ 占有移転禁止の仮処分命令は,債務者を特定することを困難とする特別の事情がある場合には,係争物が動産であるときであっても,債務者を特定しないですることができる。

オ 土地について処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者に当該土地を売っていた場合には,その売買による所有権の移転の登記が当該仮処分の登記より後にされたときであっても,当該第三者は,債権者に対し,当該土地に係る所有権の取得を対抗することができる。


1 アエ    2 アオ    3 イウ    4 イエ    5 ウオ

解答・解説

解答:3

ア ×
仮処分命令において,裁判所は,保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り,債権者の意見を聴いて,仮処分の執行の停止を得るため,又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭(仮処分解放金)の額を仮処分命令において定めることができます。

ポイント いっぽう,仮差押命令においては必ず仮差押解放金の額が定められます。


イ 
不動産の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全債権として処分禁止の仮処分を得た債権者は,当該売買が無効であっても,当該売買によって当該不動産の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは,時効完成後に当該不動産を債務者から取得した第三者に対し,当該仮処分が時効取得に基づく所有権移転登記手続請求を保全するものとして,その効力を主張することができるとされています(判例)。

ポイント 仮処分決定は,もはや売買に基づく所有権移転登記手続請求を被保全債権とする処分禁止の効力は有しないものの,取得時効の完成以降は,時効取得に基づく所有権移転登記手続請求を被保全債権とする処分禁止の効力を有するとされています。


ウ 

占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは,債権者は,本案の債務名義に基づき,当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者に対し,係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができます。

ポイント 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを「知って」当該係争物を「占有した」者に対しても,同様です。


エ ×

占有移転禁止の仮処分命令であって,係争物が不動産であるものについては,その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは,裁判所は,債務者を特定しないで,これを発することができます。すなわち,係争物が動産である場合には,債務者を特定しないで命令を発することはできません。

ポイント 係争物が不動産である場合に限られます。


オ ×
たとえ処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者へ処分行為を行っていたとしても,その処分行為にかかる登記が当該仮処分の登記より後にされたときは,当該第三者は,債権者に対して権利の取得を対抗できないとされています(判例)。

ポイント いわゆる対抗関係と同様に考えます。


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